エディー・ジョーンズ前日本代表HCが11月4日早朝、11月1日からヘッドコーチに就任したスーパーラグビー「ストーマーズ」の本拠地・南アフリカのケープタウンに向けて、羽田空港から出発した。飛行機に乗る前に15分ほど、報道陣の取材に対応した。
――日本を離れる今の気持ちは?
ジョーンズ氏 タクシーに乗って、ここまで来たのですが、旅立つことで悲しさもあります。4年前にスタートしたとき、自分たちがこれから成し遂げたいこととして世界のトップ10を掲げました。本当に今、日本はトップ10です。新しい歴史作りました。そして日本のラグビーに誇りを取り戻した。それらをやりとげました。だから悲しいと思う理由はありません。私のミッションは完了しました。日本ラグビーは良い状態にあります 誰かが引き継ぐときです。代表チームのヘッドコーチは一生やるような仕事ではありません。期限付きでやるものです。
そして代表チームのコーチを次に引き継ぐときは、その国の状態が良くなっていることが理想です。その点に関して言えば、私は一定のことをやり遂げた自信があります。個人的に悲しいと思う部分はありますが、悲しいと思う理由はありません。プロとして仕事をやり遂げた気持ちはあります。今後、日本のラグビーがどう発展していくのか見るのが楽しみです。
――心残りはありますか?
ジョーンズ氏 やることいっぱいありますが、ただ自分が代表コーチとしてはやり遂げました。日本ラグビーの発展に終わりはないのでまだやるべきことはあります。
――五郎丸がレッズと合意。ジョーンズ氏はレッズのヘッドコーチ経験もあります。
ジョーンズ氏 彼は彼の夢を追いかけていると思います。選手としてはそれはやりたいことだと思います。個人的には嬉しいことだと思います。サンウルブスにとっては良いニュースではないですが、五郎丸とっては個人的には良いことですし、またスーパーラグビー選手が生まれたのですから、日本ラグビーにとってはすばらしいことです。
――今後もアドバイザーとかで日本ラグビーをサポートしていくのでしょうか?
ジョーンズ氏 私の決断だけでは決められないですが、長年、私は日本ラグビーに関わってきました。代表チーム2回、サントリーともずっと関わりを続けてきます。個人的な思いでは、日本ラグビーに関わり続けたいという思いはあります。日本協会、サントリーとは今の時点ではそういった関係は何もありません。
――コーチングでの喜びは?
ジョーンズ氏 自分自身コーチとして成長できたときが喜びです。選手たちが成長し続けていく、それも見ていて喜びです。
――個人的にワールドカップで成長したことは。
ジョーンズ氏 一つ言えるのは日本の選手を見ていて、事実として、勝つためのマインドセットが大事というところを目の当たりにしました。マインドセットがしっかりできたときは思った以上のパフォーマンスを発揮してくれるということです。それは期待していたとうより、タレントとして捉えていた才能があって、持っていたもの以上のものを出して、それ以上のものが結果として出てきた。最初、スーパーラグビー選手は1、2人しかいなかったのが増えていったのも目安です。
――指導していた選手と対戦しますが。
ジョーンズ氏 そういうことは今までもあって 特別な思いはない。日本代表と対戦するわけではないです。日本代表であれば難しいですが。スーパーラグビーの中であれば、南アフリカのバーガーだったり、オーストラリア代表の選手だったりとは対戦済みです。
――ストーマーズに日本の選手を呼ぶことは。
ジョーンズ氏 ないです。南アフリカのチームなので。
――反響が大きいですが心配はありませんか。
ジョーンズ氏 そこは心配いらないと思います。自分がトップリーグのヘッドコーチだったら、彼らをちゃんとラグビーに戻すことを考えないと思います。本当にTVにちょっと出過ぎかなと思いますが節目をもうけないといけない。彼らはラグビー選手ですから、普及も彼らの仕事の一部ですがメインではない。彼らがやるべき普及は良いプレーをすることだと思います。
――次の代表のヘッドコーチにはジャパンウェイを引き継いでほしいか。
ジョーンズ氏 ジャパンウェイを築いていくか決めるのは、新しいコーチングスタッフです。ただ一つ言えるのは4年間で培ってきた情報などを望まれるのであれば、喜んで共有したいし、共有すべきだと思います。ただ、それが継承されていくか確認するのは自分の仕事ではないが、100%共有できるようにしておきます。
――ワールドカップ後に総括はしたか。
ジョーンズ氏 日本協会からはそういった要請はなかったです。
――藤田選手はすぐに7人制代表に参加しました。彼の7人制の特性は。
ジョーンズ氏 いつも言っていますが、彼は才能のある若い選手です。だんだん成熟してきています。成長の過程において7人制は助けになるとおもいます。2019年のキープレイヤーの一人になると思います。学び続けていくことが大事だと思います。一生懸命やってほしいです。W杯の決勝を見ると、SOカーターは30歳を超えていますが、決勝で見せたものは基礎の素晴らしさです。日本の選手たちはときどき、そういった基本の大事さを失いがちです。
自分たちがボールを持ったとき自分たちがどうやるか、失ったときに全力で奪い返さないといけないです その礎、基礎の部分です。
――ストーマーズではどんなラグビーを?
ジョーンズ氏 勝てるラグビーをしたいです。正式には11月1日からストーマーズのヘッドコーチになっていますが、11月16日から指導します。彼らにとって適切なトレーニングをしたい。
――日本でのクリニックでの雰囲気は変わった?
ジョーンズ氏 そこは変わらないです。数ヶ月、草の根レベルでやるクリニックが多かったです。彼らはすごく学びたい、指導方法を変えていきたいという気持ちがあって、それは変わらないです。参加者は最初の3年間も興味があったと思いますが、この1年は興味もあるが、学んで変わりたいという姿勢があった。
――日本でのベストメモリーは?
ジョーンズ氏 おそらくベストメモリーはウェールズ代表に初めて勝ったときです。あの試合で世界のトップ10になれる自信、思いがしっかりできました。それをファンとも共有できました。日本ラグビーが変わったと思えた最初の試合となりました。
――最後にファンに向けて一言お願いします。
ジョーンズ氏 この4年間、ファンのみなさまのサポートは本当に素晴らしいものでした。ファンと一緒にチームが成長できました。素晴らしいファンとお別れになるのは個人的に悲しいですね。
斉藤健仁 スポーツライター。1975年4月27日生まれ、千葉県柏市育ち。印刷会社の営業を経て独立。サッカーやラグビー等フットボールを中心に執筆する。現在はタグラグビーを少しプレー。過去にトップリーグ2チームのWEBサイトの執筆を担当するなどトップリーグ、日本代表を中心に取材。プロフィールページへ |